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エッジAI: エッジコンピューティングの可能性を拓く

6 読了時間 (分)
エッジでの人工知能: ビデオ監視の可能性

技術用語のように聞こえるかもしれませんが、エッジコンピューティングとAIを組み合わせることは実用的なメリットをもたらします。実際、エッジAIは、セキュリティ業界でAIが適用されている主要な分野の1つであり、したがって、社会的責任を意識してAIを実用化する上での考え方をリードしています。この記事では、エッジAIの現状とそれがもたらすメリットについて見ていきます。

エッジAIとはどういう意味でしょうか? 

まずは、「エッジAI」について説明していきます。 

近年、プライベートおよびパブリックネットワークのエッジに接続されるデバイスの数は年々増加しており、2019年には90億台弱、2030年には290億台になると推定されています。 

監視カメラを含むこれらのデバイスの多くは、強力なコンピューティングデバイスにもなっています。その結果、エッジデバイス自体でより多くの処理を実行できるようになり、エッジコンピューティングとして定着しています。  

この処理能力の向上に伴い、人工知能(AI)のサブセットである機械学習(ML)と深層学習(DL)の進歩により、カメラ自体にAI機能を持たせることができるようになりました。これが、「エッジAI」です。 

ビデオ監視におけるエッジAIの意味 

ビデオ監視ネットワークにとってエッジAIとは、簡単に言えば、より高度な分析機能を通じて、カメラ自体でより多くのアクションを実行できることを意味します。   

AIは、カメラがシーンを理解しリアルタイムに特徴を識別することを可能にします。人間や車両などの物体を高い精度で検出、分類、計数、追跡することが、データに基づいた洞察からアクションを起こすための基盤を形成します。

これらの洞察は、データを分析し意思決定を行うために必要な人的入力の負担を軽減します。最終的には、意思決定を迅速にし、都市や交通システムなどの未来を形作ることにつながるはずです。

より実用的な洞察を実現

エッジAIは大幅な機能向上をもたらします。以前は、動きベースの分析機能が「何か」が動いたことを検知し、アラートをトリガーさせていました。AIベースのエッジ分析機能は、その動きを車両として認識、分類し、制限区域や危険区域に入ったかどうか、近くに人がいるかどうか、その他多くの要素を分析します。

このような情報は、オペレーターにとって非常に実用的であり、誤検出を大幅に減らします。     

例えば、エッジAI分析機能は、高速道路上の物体を識別し(これまでしばしば課題であった影と素早く区別できる)、標識を通じてドライバーに自動的にアラートを発することができます。 

しかし、人と車両を区別するAIは、ドライバーに発する警告レベルを調整することに役立ちます。カメラが道路上で危険な状態にある人を発見した場合、自動的に標識を作動させ、交通を減速、あるいは停止させ、救急隊にアラートを発することができます。 

車両(または他の物体)を特定した後、分析機能はその車両を追跡でき、インシデントの監視と調査においてオペレーターをサポートします。   

検索機能の強化

これは、エッジAI分析機能によって作成されたデータ(およびメタデータ)とともに、ビデオ映像のより高度な検索 をサポートします。これにより、オペレーターは多数のカメラで撮影された何時間もの映像から、特定の対象物を素早く特定できます。そうすることで、インシデント後の調査のスピードと効果が大幅に向上します。  

負担の分担: ハイブリッドソリューションアーキテクチャにおけるエッジAI 

エッジAIはネットワークのエッジに強力な分析機能をもたらすだけでなく、ハイブリッドソリューションアーキテクチャにおいても貴重な役割を果たします。このようなアーキテクチャは、エッジ、クラウド、オンプレミスのサーバー環境を最大限に活用します。  

分析機能がサーバーに集中管理されている場合、カメラを増やすとデータ転送量が増え、分析機能を処理するためにサーバーを追加する必要があります。エッジAI分析機能を導入することで、最も関連性の高い情報のみがネットワークに送信され、帯域幅とストレージの負担が軽減されます。 

クラウドやサーバーベースの分析機能は、多くの場合、エッジでの前処理から恩恵を受けることができ、より消化しやすいメタデータで「オフカメラ」の分析をサポートします。その他の分析機能は、その複雑な処理のため、クラウドやサーバー上で完全に実行する必要があるかも知れません。   

ハイブリッドソリューション は、エッジAIによって作成されたメタデータをクラウドベースのデータダッシュボードに送り、強力なサーバーベースの分析機能を適用して、トレンド、パターン、 異常を特定し、対応します。

システムの各部分の機能、容量、強みを利用してハイブリッドアーキテクチャ全体でスマートに作業することで、ボトルネックを回避し、コストを抑え、高いパフォーマンスを維持できます。

精度を高めるためのエッジAI分析機能

データの劣化がないため、精度を高めるためにエッジAI分析機能が利用されています。  

エッジ分析機能の主な利点は、分析機能がソースに限りなく近い最高品質のビデオ映像で行われることです。分析機能がサーバー上で行われる従来のモデルでは、ビデオは転送前に圧縮されることが多く、そのため分析機能は劣化した画質のビデオで行われます。  

しかし、エッジAIは高品質の画像に依存しますが、レンズの汚れや曇り、カメラの位置ずれなどの問題が発生する可能性があります。

その名が示すように、エッジAI分析機能の新しいカテゴリーである画像健全性分析機能は、監視カメラで撮影される画像の品質を継続的に監視し、他のエッジAI分析機能が最も効果的にシーンに適用されるために必要な閾値を下回った場合にオペレーターにアラートを発します。  

エッジ AI: セキュリティの枠を超えたユースケース 

エッジAIが従来の安全やセキュリティのユースケースに価値をもたらし、救急隊員やセキュリティ担当者がより迅速かつ適切に対応できるようになっていることは明らかです。 さらに、エッジAI分析機能から得られる詳細なデータとメタデータは、さまざまな分野で業務効率を向上させています。

  • 都市計画担当者はデータを利用して都市環境の「デジタルツイン」を作成し、デザイン、交通管理、ノイズ制御などの改善をテストして、市民の生活の質を向上させています。   
  • 企業は分析機能を利用して、建物内のエネルギー使用をより適切に管理し、環境への好影響につなげています。  
  • 医療、教育、小売、それ以外の分野でも、監視カメラに搭載されたエッジAIが、患者、学生、顧客へのサービス提供や成果を向上させています。   

それでもまだ、エッジAIの可能性のほんの表面をなぞったにすぎません。  

弊社の分析機能ポートフォリオについて詳しくはこちらをご覧ください。

Timo Sachse

Timo Sachseは、Axis EMEA組織のソリューションエンジニアリング部門のチームリーダーとして働いています。彼の職務の一つは、Axisのイノベーションとその利点をエンドユーザーに伝えることです。職務において定期的に新製品や生産前モデルをテストし、スウェーデンの製品開発チームとも緊密に連絡を取り合っています。

Timo Sachse
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