世界的な不況の影響でほぼ全ての業界で騒然としています。小売業界も同様にさまざまな課題に直面しています。コストが徹底的に見直される一方利益率がぎりぎりまで低下している現状を見ると、課題はより明白になってきています。
この景気情勢の中で小売企業は業務を合理化し、最大限の投資対利益を引き出すことが重要です。
監視機能や監視ソリューションを新たに購入する際、コスト削減や利益率の上昇につながるか、そして、コスト削減や利益率の上昇をどうすれば実現できるかを検討する必要があります。適切なソリューションか熟考を重ねる必要があります。利益を得るには、店舗のセキュリティ管理だけでなく、全体的な支出の抑制にも貢献する何かを備えたものでなければなりません。究極的には、最適なソリューションとは「単なる経費の1つ」ではなく、ビジネスに付加価値をもたらすソリューションと言えます。
ここでは、投資利益率 (ROI)をプラスにする方法を模索する際に、監視システムの総所有コスト (TCO) の重要性を説明します。
総所有コストの重要性
監視システムを所有するには多くのコストが伴い、取得→運用→廃棄のあらゆる段階で繰り返し発生します。そのため投資の際にTCOアプローチを使用して全体的な価値を考慮することが重要です。概念としてのTCOはすでに定着し、さまざまな業界で利用されており、購入に関わるすべてのコストを把握することがその中心となっています。このアプローチを採用することで、カメラソリューションのライフサイクル全体で発生するソリューション関連コストを計算に入れることができます。
もちろん、監視技術を実現する各部分のコストを見落とすわけにはいきません。小売企業では、多数の店舗で何百台ものカメラを利用するシステムが必要な場合もあります。このような場合には、当然ですが、初期費用は高額になります。ハードウェアに費やす初期投資費用が、あっと言う間に積み上げられていく可能性がありますが、このような経費は非常に「目に付きやすい」コストだという点に注意することが重要です。
長期的な観点から、ハードウェアの初期費用よりはるかに上回るのは、設置費用、運用とメンテナンス、スタッフ教育など、ソリューションを使用するために必要な、見えにくいが継続的に発生するランニングコストです。だからこそ、ソリューションの何が最終的に高コストになるかを考える際に、TCOを考慮することが重要です。
ハードウェア以外の間接的コスト
監視ソリューションの直接経費の検討後は、発生する可能性のある間接的なコストを把握することが非常に重要で、選択するカメラシステムによって異なる場合があります。仕様もパフォーマンステストの結果も似たようなセキュリティカメラがあっても、品質や寿命について確実に考慮する必要があります。目先のコストダウンに捉われて長期的出費を余儀なくされるおそれがあるため、この隠れた間接的コストは、小売業における投資評価の一環として必ず検討する必要があります。
たとえば、間接的費用項目として、運用・定期メンテナンスだけではなく、システム管理、セキュリティ担当者の人件費、オンプレミスおよびクラウドのデータストレージ、消費エネルギー、サイバーセキュリティ、ファームウェアアップグレードの管理などが挙げられます。こうしたすべての側面に確実に目配りすることは、財政上長期にわたって大きな意義があります。
以上について考察した後には、ケーブル敷設、システム設計、機器操作トレーニング、システム運用に必要なドキュメントの入手など、より細かいコストも計上する必要があります。しかしこれで終わりではありません。サイバー攻撃、設計変更、最終的にシステムが耐用期間を終えたときの廃棄費用など、より予測しにくい無形のコストについても考慮する必要があります。
こうした理由から、小売企業においては、拡張性のあるシステムを選ぶことでメリットが得られます。たとえば、オープンプラットフォームに基づくシステムであれば、年月の経過とともに簡単にアップグレードや拡張を行うことができ、信頼性が高まるという確信が得られます。その結果、将来的な運用コストやメンテナンスコストのコストダウンが可能になり、最終的にROIの向上につながります。
投資の実際のリターンを改善
ROIに関しては、監視システムが事業にいかに貢献し、価値を生み出すかを考えることが重要です。このようなリターンは、カメラを他のソリューションと組み合わせた場合に、特に実り多いものとなります。たとえば、窃盗、利益損失、不正行為に関連する問題を抱えている場合には、複数のソリューションを組み合わせて利用し、問題を最小化することができます。
例として、英国のあるアパレル小売企業では、複数のソリューションを組み合わせて導入したところ、不正行為の件数が50%減少、システムの投資回収に要した期間が2か月未満という結果になりました。この技術によって返品プロセスも改善されました。顧客からの申し立てを検証できるようになり、申し立ての75%以上が虚偽であることが判明したからです。この技術は顧客が商品を精算せずに持ち去ってしまう、ショッピングカートの店外持ち出しにも応用することができます。監視システムとインテリジェントモニタリングを利用して、より確実に損失を防止することができます。
既存のセキュリティシステムに機能を追加し活用することは、初期投資から多くの価値を生み出すもう1つの方法です。システムをセキュリティ目的以外にも使用する、小売ビジネスにメリットをもたらす使用事例がいくつもあります。たとえば、カメラに搭載された分析機能が特に有益であることが分かる場合があります。他にもリアルタイムでアナウンスを行うことにより店内スタッフの管理の改善、自動プロセスを利用した業務効率の最適化など、利益を生み出す手段が随所に存在します。
部署を横断したシナジー強化に役立つ潜在的なメリットもあります。運用管理者と店舗管理者が協力することで、プロジェクトの予算を増額し、小売ビジネスに価値をもたらすことができます。これが、監視システムの全体的な付加価値に貢献し長期的に確実にROIを実現することができます。